| なぜ英語力が大きく伸びないのだろうか 私達はフリーランスの通訳 (翻訳) 者です。メンバーは 23〜28歳から通訳 (翻訳) の仕事を始めて,現在までに15年〜20年の通訳 (翻訳) の経験があります。 しかし,帰国子女でも,インターナショナル・スクールの卒業生でもなく,特殊な環境で英語教育を受けたわけでもありません。特別に頭が良いわけでもありません。 皆,努力と工夫を重ねて英語力を一定のレベル (英検1級が余裕で受かる程度。TOEICで言えば950点以上) にまで引き上げ,そこからさらに20年近く英語を使う仕事に携わってようやくコミュニケーションに不自由しない英語力を身につけています。 教育環境も才能も同じでありながら,どうして英語ができるようになる日本人とそうでない人がいるのか。英語ができるようにならない人のどこに問題があるのか。まずはこの点について考えてみたいと思います。 英語のインプットが極端に少ない日本人の英語学習 英語ができる人とそうでない人の一番大きな違いは英語のインプット量の差です。 我々が一定レベル(英検1級程度) に達するまでに接した英語の量 (英語の文字ならびに音声情報の量) を10 とした場合,平均的な英語学習者は2〜3程度ではないかと思います。 英語ができるようにならない人は,辞書を引いたり,日本語の訳を書いたり,学習法を研究したりという 「英語に接しない時間」 が多く,英語のインプットが少ないのが特徴です。英語に接する時間が少なく英語に慣れていないので英語の処理能力が低いのです。よく 「日本人は中学から大学まで英語を10年もやっているのに英語がしゃべれない」 と言われますが,むしろ 「日本人は中学から大学まで10年もかけて実質6ヶ月程度の英語のインプットしかしていないから英語がしゃべれない」 と言った方が正しいと思います。 一方,英語ができるようになった人は,学習した英文を 「瞬時に理解できる」 ようになるまで音読して反復したり,少し易しめの英文を大量に読んだり聞いたりして,「英語に接する時間」 を増やした人です。英語に接する時間が長く英語に慣れているので,英語の処理能力も高いのです。 英語の大量インプットを阻害する要因 英語ができる人とそうでない人の違いは語学の才能ではなく,英語のインプット量の違いです。ですから,英語ができるようにするためには 「英語に接しない英語学習の時間」 を少なくし,「英語に接する英語学習の時間」 を増やすことが大切です。 しかし日本の英語教育の中にはこの 「英語の大量インプット」 を阻害する要因がたくさんあります。主なものを挙げてみますと, (1) 単語力・文法力の不足 (2) 教師の見識・やる気不足 (3) 難しい教材の選択 (4) 学習法ばかり追求する風潮 (1)の 「単語力」 と 「文法力」 がなければ大量インプットをしたくてもできません。特に最近は文法を学ばなくても英語は上達するというメッセージを発する教育者がいるようですが,文法の知識が不足していると,個々の単語の意味を辞書で調べても文章全体が正確に理解できません。些末な文法まで覚える必要はありませんが,高校卒業程度の文法は必ず身につけておく必要があります。 (2)は英語教育の担い手である英語教師の問題です。予習では生徒に単語を調べさせた上で和訳をさせておき,授業ではその和訳と文法確認を行って終了という授業が多いと思います。むしろ大切なのは確認 [理解] 後の反復と定着ですが,確認 [理解] に至るまでに全ての学習時間が費やされ,反復と定着のための学習時間がほとんどない状況を教師が作り出しています。反復と定着の重要性を教えたり,それを工夫して授業の中で行っている教師の割合は非常に低いのが現状だと思います。教師は生徒に対し,確認[理解]した英文を反復させたり,それと同じレベルの負担の少ない英文を大量に読むよう指導すれば英語のできる生徒はもっと増えます。 (3)は特に大学受験生に当てはまります。大学入試の英文が難しいために,難しい教材ばかりを行いたがる生徒や教師がいますが,理解に時間のかかる難しい英文 (=構造的に複雑で内容が抽象的) の読解演習ばかりを行っていると必然的に英語のインプット量が少なくなり,英文を理解するための基礎が定着しません。英文を理解するための基礎が身についていなければ難しい英文の理解はできません。英語が伸び悩む生徒の多くは,基礎ができていないのに応用練習ばかりをやっているのです。 (4)は現代の風潮かもしれません。 「英語は (やり方次第で) 誰でも簡単にマスターできる」 という謳い文句と 「画期的な学習法」 は後を絶ちません。しかし英語ができるようになった日本人は画期的な学習法を駆使したからそうなったのではなく,たくさんの英語に接したからそうなっただけのことです。我々日本人が日本語を流ちょうに操ることができるのは,幼少期からやさしい日本語に大量に接してきたからです。心のどこかに 「英語はやり方次第で楽にマスターできる」 という意識があると 「英語の大量インプット」 という苦行を行おうとしないので,いつまでたっても英語ができないままです。 以上の考察を踏まえて,英語ができるようになるための 「英語の大量インプット」 の方法について考えてみます。 次に進む |